国内最大級のバックボーンネットワークを有しインターネットデータセンター事業を運営するさくらインターネット株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:田中 邦裕)は、NTTデータ先端技術株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:山田 伸一)、河村電器産業株式会社(本社:愛知県瀬戸市、代表取締役社長:河村 幸俊)、日商エレクトロニクス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:瓦谷 晋一)と4社合同し、画期的な電力効率をほこる高電圧直流(HVDC※1)給電システムについて、2011年秋に竣工予定の石狩データセンターでの採用に向けた総合的な評価検証を実施いたします。HVDCの採用と北海道の冷涼な外気を活用した外気冷房により、石狩データセンターのエネルギー効率は世界最高水準となり、国家レベルの問題として我々に課せられている電力問題の解決に向けたデータセンター業界としての取り組みの第一歩となると考えています。
電力問題における短期的な焦点は、東日本大震災の影響による深刻な電力不足を乗り切るための需要サイドの使用電力抑制にあてられていますが、より中長期的な視点では、エネルギー効率の向上や自然エネルギーの活用などの重要性が増してくると考えられます。データセンター事業者においても、電力問題の解決に向けた取り組みをこれまで以上に進めていく必要があり、低コストかつ省エネであるデータセンターを提供していくことは、我々データセンター事業者に課せられた大きな課題であると認識しています。
石狩データセンターにおいては、すでに北海道の低温外気という自然エネルギーを活用した外気冷房を採用することを発表しており、通年外気冷房のみの場合のPUE※2は1.11を達成する見込みです。従来型のデータセンターと比較すると、空調の消費電力を約9割削減できる計算となり、これだけでも非常に大きな意味をもつ取り組みであると考えています。しかしながら、外気冷房による空調電気代の削減はあくまで「PUEの分子」をいかに小さくするかというものであり、「PUEの分母」であるUPS設備以降のIT機器の消費電力そのものを引き下げるものではありません。そのため、当社では、PUEの分母を小さくすべく、電力効率を改善するための様々な検討を続けてきました。
今回発表する高電圧直流給電システムであるHVDC 12V方式は、UPSからサーバなどの機器にいたる電力の経路での各種損失を徹底的に取り除き、PUEの分母であるIT機器の消費電力そのものを大幅に引き下げることを可能にします。受変電設備からサーバまでの経路における総合的な電力効率は90%以上となり、従来のAC方式(効率70~80%)と比較して画期的な電力効率を実現します。外気冷房に加えてHVDCを採用することにより、石狩データセンターのエネルギー効率は世界最高水準へと達し、競合他社はもちろん海外勢をも圧倒する低コストと省エネを同時に実現していきます。そして、国家レベルの課題である電力問題に対するデータセンター業界の取り組みの第一歩として、次世代データセンターのスタンダードを確立していきたいと考えています。
※1 High Voltage Direct Currentの略で高電圧の直流での給電方式を意味する。HVDC 12V方式は、300Vを超える高電圧直流を集中電源で12Vへと降圧した上でそのままサーバに給電する方式。
※2 Power Usage Effectivenessの略でデータセンターのエネルギー効率を示す指標の1つ。PUE値とは、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った値である。いくつかの算出方法があるが、当社ではもっとも一般的であるL1(UPS設備以降の消費電力をIT機器の消費電力とする方法)を採用している。
HVDC と外気冷房が実現する世界最高水準のエネルギー効率
高電圧直流給電システムであるHVDC 12V方式の採用により、従来型のデータセンターを100とした場合の石狩データセンターの消費電力は、外気冷房とAC方式での給電の場合で60となり、HVDC 12V方式の場合にはそこからさらに下がり、半分の50という数値を実現します。IT機器と空調の消費電力は、AC方式と比較して10~20%ほど削減される見込みです。PUEの分母となるIT機器の消費電力が減少するため、PUE値こそ変化しませんが、実際の消費電力は大きく削減されることになります。
HVDC 12V方式の概要
HVDC 12V方式は、従来のAC方式での給電システムと比較して、IT機器部分での電力の損失が非常に少なく効率に優れているだけでなく、高価なUPS(無停電電源装置)やサーバ内部の電源ユニットが不要となるなど設備構成がシンプルであるため、コスト面でも大きな優位性をもつ給電システムです。
従来のAC方式では、安定した交流電源を確保するために受電設備にUPSを設置しており、UPS内部のバッテリーはDC方式で稼働しているため、まずここでAC→DC→ACと2度のAC/DC変換がおこなわれます。加えて、サーバ内部の電源ユニットでも再度AC/DC変換がおこなわれ、合計で3度のAC/DC変換が実行されます。変換時には必ず電力損失がともなうため、AC方式での効率は70~80%にとどまります。
一方、今回のHVDC 12V方式では、ACで受電したものをPSラックでHVDCに変換し、あとは直流のまま一気にサーバまで電力供給をおこなうため、AC/DC変換は1度きりです。高電圧となるHVDCは集中電源がおかれるサーバラックで12Vまで降圧され、安全な形で各サーバまで給電されます。総合的な効率は90%以上となり、従来のAC方式と比較して画期的な電力効率が実現可能です。
4社合同で実施する今回の評価検証の内容
さくらインターネット、NTTデータ先端技術、河村電器産業、および日商エレクトロニクスの4社合同にて、まずは5月から6月にかけてHVDC 12V方式の評価検証を実施します。本方式の効果はすでに実証実験にて検証済みですが、石狩データセンターでの実運用を視野に入れた設備構成を完成させることを目的とします。その後、石狩データセンターでの実運用テストにて、実際のデータセンターにおける安全性を実地確認するとともに、外気冷房の活用およびHVDCの採用による総合的なエネルギー効率の検証をおこなう予定です。
<参考資料>
北海道の冷涼な外気を活用した外気冷房の仕組み
北海道の冷涼な気候を活用した外気冷房により、ほぼ通年でサーバルームの外気冷房が可能です。低温の外気とサーバからの排熱を混合し、最適な温湿度の冷却風をサーバルームに供給します。外気冷房の導入により、空調にかかる消費電力の大幅な削減を実現します。
・石狩データセンター断面図(イメージ)
以上
■さくらインターネット株式会社
本 社:大阪市中央区南本町1丁目8番14号
設 立:1999年8月17日
従業員:169名(平成23年3月末現在)
資本金:8億9530万円
売上高:85億8438万円(平成23年3月期)
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さくらインターネット株式会社 企画部 広報宣伝チーム
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