昨今、注目を集める「IoT」という言葉。しかし、IoT市場への参入に対して消極的な見方を持つ企業も少なくありません。もっと誰もが簡単にモノやコトのデータを活かせないか――さくらインターネットでは、そのボトルネックを解消すべく、IoTの新たなプラットフォーム「sakura.io」を開発しました。
多くの企業がIoT市場への参入にあたって抱えていた課題
「IoT(アイオーティー)」とは、Internet of Thingsの頭文字を取ったものです。「モノのインターネット」——モノ・コトの情報がネットワークにつながり、モノ・コトが情報をやり取りすることによって新しい価値を生むといわれています。
IoT化が進むと、冷蔵庫や自転車など、私たちの身の回りのあらゆるモノがインターネットを活用し、センサーを介して情報の交換をするようになります。
すると、たとえば離れた場所にいても冷蔵庫の中身を確認したり、駐輪場に置いた自転車に異常がある場合の通知を受け取ったりできるようになります。その他にも、離れて暮らす高齢の親がベッドから起きて活動をはじめたかどうかを知るなど、生活がより便利に、豊かになるのです。
しかし、これだけ可能性を秘めた市場を前にしても、IoTへの参入に対して消極的な見方を持つ企業が少なくありません。
その理由のひとつは、メーカーで経験を積んだエンジニアにとって、モノをIoT化するためのパーツや仕組み(ソフト)を作り出すことは、これまで培ったスキルとは別ものだったから。
反対に、システム構築の経験を持つITエンジニアも、家電や時計などを作るものづくりのスキルを必ずしも持っているわけではありません。
では、どうすれば企業がこの分野へ参入するハードルを低くすることができるのか――そこで当社がたどりついた答えが、「sakura.io(サクラアイオー)」という新たなIoTプラットフォームサービスを、世に送り出すことでした。
「情報はモノが送信する」のではなく、「情報を自分たちが迎えにいく」という発想のもとで開発した「sakura.io」。
モノとネットワーク間でデータを送受信するために、電子回路を当社のデータセンターまで延伸する通信モジュールと、外部のサービスと連携させるプラットフォームを組み合わせて提供しています。約1年の開発期間を経て、2017年4月から正式サービスとして開始しました。
私たちはこの「sakura.io」を通じて、さまざまな企業のIoT事業参入におけるボトルネックを解消し、誰もが簡単に「モノ・コト」の相関性や関係性を見出し、世界でシェアできるようにしたいと考えています。
入社してはじめて見た、おどろきの事業計画
「sakura.io」の要となったのは、当社IoT事業推進室室長の山口亮介。彼は、パブリック型クラウドサービス「ニフティクラウド」立ち上げメンバーのひとりであり、その後、海外から輸入したIoT家電のローカライズを担当していました。
山口 「別の会社で働いていたときから、当社社長の田中とは知り合いでした。そんなあるとき田中が、僕に向かって唐突に『モノのTwitterっておもしろいと思いませんか?』と言ってきたことがあって。 最初は正直、真意がよくわからなかったのですが、モノがつぶやくという考えは確かにおもしろいかもしれない、と思いました。バイヤーとしてアメリカに渡航する直前に、それをふと思い出して、さくらインターネットに入社することにしたんです」
アメリカ行きをひるがえしてまで、彼がさくらインターネットへの転職を決断したことには理由がありました。
山口 「IoTが叫ばれて久しいのに、いまだに『いつか誰かがつなげてくれるだろう、データはどうにかして持ってこれるだろう』と、他人任せで考えている企業がほとんどだと感じていました。まさにゼロからイチになりかけている市場で、それを事業として形にしていくのは楽しいんじゃないかな、と考えたんです。実際、海外に行くよりも、何倍も楽しくおもしろい経験ができています」
しかし2016年4月に入社した山口を待ち受けていたのは、想像を超えた事業計画でした。
山口 「われわれはインターネットのインフラの会社ですが、モノをIoT化するには、通信モジュールが必要です。通常は数万円かかる通信モジュールの販売価格が1万円以下になるように、またサービス月額料は100円以下になるように、という目標があって。はっきり言って『そんな無茶な!』と思いましたね(笑)」
しかし山口は、データが企業の中だけにとどまっていて価値を生み出しきれていないという現状を、なんとか打破したいと思っていました。
そして彼と同様、この計画に興味をもち、困難な状況にも臆せず楽しむ社内のメンバーが自然と20名ほど集まり、IoTプラットフォームサービスの事業化に乗り出すことになったのです。
わずか1年の開発期間で、セキュア・低価格なサービスをリリース
山口が当社に入社してから約1年。メンバーの尽力もあって、2017年4月18日に、IoTプラットフォーム「sakura.io」を提供開始しました。山口は開発に携わった期間について振り返り、「この1年? もう10年くらい経っている気がする!」と笑います。
山口 「とにかく開発期間が短く、目指していた価格帯をどのように実現するのか、また誰向けのどのようなサービスにすればいいのかなど手探り状態でした。 でも幸いなことに、集まったメンバーはそこが暗闇の洞窟だろうと何だろうと、後先考えず喜んで飛び込むような人たちばかり。それぞれが新しいことにチャレンジしてくれて、振り返ってみれば本当にワクワクできる時間でした」
sakura.ioには、モノとネットワーク間でデータを送受信するための「さくらの通信モジュール」、通信環境、データの保存や連携処理に必要なシステムが含まれ、それらを一気通貫して提供することができます。
通信モジュールでやり取りするデータは、クローズドで安全な通信網(閉域網)を通じて、さくらインターネットのデータセンターに保存されます。さらに、外部のシステムと連携したい場合はAPIでのやり取りのみ可能で、暗号化も行えます。
このため直接デバイスに侵入されたり、デバイスを乗っ取られて外部のシステムに攻撃をしてしまったりすることもありません。「端末をサイバー攻撃の踏み台として使われてしまわないか」というIoTにつきまとう課題をクリアし、安全のみならず安心も感じていただけるようにしました。
最初は無謀だと思った価格も、LTEの通信モジュールが8,000円、月額利用料金は通信モジュール1台につき60円(毎月1万回分のデータ通信料含む)という低価格を実現しました。
山口 「さくらインターネットがもともとインターネットのインフラの会社だったということが、この価格を実現できた大きな要因でしょう。データセンターやそれらを結ぶ通信回線、ノウハウを持っているわけですから。それらがまったくないところからはじめようとしたら、きっとできなかったと思います」
流通するデータとモノ、コトの連携が新たな価値を生み出す
通信モジュールの価格を他社標準価格の1/3、月額利用料にいたっては1/10という低コストを実現したsakura.ioは、エンジニアが新しいスキル習得を必要とすることなく、企業が事業形態を大きく変えることもなく、安価にIoT事業に取り組む足がかりとなることでしょう。
モノ・コトのデータの利用価値は無限に広がっています。実際にありとあらゆる分野での活用がはじまっており、近い将来、私たちの生活になくてはならないものになるはずです。
たとえばある自治体では、行政が公共バスの利用動向を分析するために、これまでは運転手がアナログで乗降者数の記録をしていました。それがIoTの活用により、運転手が簡単な操作をするだけで、乗降者数をリアルタイムに可視化できるように。さらにそのデータから、バス利用者が事前に混雑状況を把握できるアプリケーションも作成されています。
農業の現場でも、IoT活用が広がっています。たとえば水田の水門にセンサーを仕込むことで、水量の変化をデータベース化。検査や管理が容易にできるようになるだけではなく、こうしたデータを蓄積してビッグデータとすることで、農業が“IT化”していく道が拓けるかもしれません。
その他、教育、介護、その他さまざまな分野において多様なアイディアが生まれ、IoTを活用したチャレンジがはじまっています。
さくらインターネットのIoTプラットフォーム「sakura.io」という名称には、開発当初の仮称である「さくらのIoT Platform」では表せなかった想いが込められています。
それは「input」と「output」の重要性を表すもの。データを取得したら、それをどんどん流通させ、モノ・コトと連携させて活用していくことによって、新しい価値、新しいサービスを世の中に広げることができるのです。
モノ・コトのデータが流通することで、どのような未来が見えてくるのでしょうか。
データとして可視化されたモノ・コトの動きを分析すれば、一見何の関連性もないようなモノ・コトから、また別のモノ・コトの動きが想定できるようになります。それが、企業にはビジネスチャンスを、個人には豊かで快適な生活をもたらします。
まさに今までは見えなかった「風が吹けば桶屋が儲かる」的なつながりが、あらゆるシーンで見えてくるようになるのです。
だれもが特別な知識やスキルを習得することなく、変化し続けるモノやコトに関する情報を活かせるよう、データのinputとoutputをサポートする――IoTプラットフォーム「sakura.io」を通して、私たちはそうした新しい価値やサービスの可能性を生み出していきます。
※転載元:PR Table https://www.pr-table.com/sakura-ad/stories/672
※内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。