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さくらインターネット、福岡大学と協力し 世界最速クラスのハードウェア 時刻同期(NTP)サーバーを自社開発 ~FPGAベースの公開NTPサービスをトライアル提供~

 インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:田中 邦裕)は、私立総合大学の福岡大学と協力し、単体で約10ギガビット/秒(約1300万リクエスト/秒)の高負荷に耐え、Stratum1※1 NTP(Network Time Protocol) サーバーとして働く専用デジタル回路を設計から開発いたしました。また開発サーバーにて、FPGA※2上で動作させて提供する実験を開始しております。

当社データセンターで稼働する当開発サーバーと時刻表示

 NTPとは、スマートフォン等を含む、ネットワークに接続される機器において、機器が持つ時計を正しい時刻へ同期するための通信プロトコルです。NTPサーバーは世界中の機器から到着する時刻同期のリクエストに対し、正しい時刻を応答し続ける役割を持っています。今日では単なる時刻合わせの利便だけでなく、コンピュータ・ネットワーク機器・IoT機器のソフトウェアアップデートのため、NTPサーバーのインフラ整備は欠かせないものとなりました。

 福岡大学は公開NTPサービスを日本で初めて運用開始し、これまで多くのユーザの利用を支えてきましたが、現在はサーバー通信負荷が数百メガビット/秒の規模に増大し、その対策が急務となっています。

 今後このような需要が発生する可能性を踏まえ、福岡大学の協力の下、さくらインターネットは高速な「FPGA ベース・ハードウェアNTPサーバ(Stratum1)」を開発いたしました。

 当社は「『やりたいこと』を『できる』に変える」の理念のもと、日々進化していくコンピューティング領域において、お客さまのニーズに合うサービスの提供ができるよう、今後も尽力してまいります。

※1 NTPはstratumと呼ばれる階層構造を持ち、最上位のサーバーが高精度な時刻供給源から標準時を取得し、下位のサーバーはそれを参照する事で時刻を合わせます。そのため最上位のNTPサーバーはstratum 1と表現されます。詳細は下記<参考情報>をご覧ください。
※2 製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路構造です。詳細は下記<参考情報>をご覧ください。

参考情報

トライアル実施について

「FPGA ベース・ハードウェアNTPサーバ(Stratum1)」は、2020年3月から2021年3月末日までの1年間に限り、研究・試験等の目的に限定して皆さまにアクセスいただく事が可能です。

動作の様子をWeb で見て体験いただける特設サイトをご用意しました。
詳細な提供条件・利用方法はサイト内の案内をご覧ください。

特設サイト
https://elab.sakura.ad.jp/ntp-trial/

※ネットワーク回線の負荷を避けるためトラフィック制限を設けており、処理能力をテストいただくことはできません。開発中の機材のため、予告なく長時間の停止、提供条件の変更を行うことがあります。

【技術的な解説】NTP の階層構造と stratum 1 サーバーに求められる安定性について

NTP による時刻配信の模式図

NTP は PC やスマートフォンなどからの時刻問い合わせに対して NTP サーバーが時刻情報を応答する、シンプルなプロトコルです。しかし、IoT機器等を含む世界中の機器からのアクセスが集中した時、その負荷は多大なものとなり得ます。

NTPサーバー群は階層構造を取り、上位の NTP サーバーからコピーされた時刻源によって動作することで、一台当たりの負荷を減らしシステム全体の能力を向上することが可能です。

一方、時刻がより正確とされ、信頼して使用されるのは高精度な時刻供給源からの信号を直接受け取って配信する Stratum 1 サーバーとされます。Stratum 1 サーバーの能力向上は高精度の時刻配信と時刻配信システムの単純化を両立する一つの手段と考えられます。

Stratum 1 NTP サーバー専用装置として、現在数十万リクエスト/秒(~数百Mbps 程度)程度の能力を持つ製品が市販されており、1ポート当り 一千万超リクエスト/秒(10Gbps ワイヤレート)の応答能力を持つサーバーも外部機関にて運用されています。<さくらインターネット調べ>

当社の開発品はこれらに遜色無い 1000万超リクエスト/秒(約 10Gbps)の応答能力を持ち、将来の NTP サーバーの負荷上昇等に対処することが可能です。

【技術的な解説】「FPGA ベース・ハードウェアNTPサーバ(Stratum1)」

さくらインターネットにて開発した「FPGAベース・ハードウェアNTPサーバ(Stratum1)」は、汎用コンピュータ上で動作する NTP サーバーソフトウェアに代わり、専用デジタル回路化された NTP サーバーと、GNSS信号受信機(GPS/GLONASS/QZSS等を含む)が生成する情報から基準周波数を作り出すGNSS 同期周波数源回路を合わせた設計によって成り立っています。

追加したインタフェースボードとFPGA内に構成したNTPサーバー専用回路のイメージ

汎用コンピュータ上で動作する典型的な NTP サーバーは、ネットワーク回線から受け取った通信パケットを一旦メモリ等に蓄積し、ソフトウェアで一つずつ解釈する方式で動作しますが、今回開発した NTP サーバー専用回路は NTP リクエストを含む通信パケットを直接受信し、リアルタイムに応答パケットを作成することができるため、大きな高速化が可能です。

専用回路の動作には、高集積なデジタル回路を後から書き込んで専用チップのように動作させることのできる FPGA (Field Programmable Gate Array)を搭載したサーバー向け拡張カード(FPGA カード)を用いています。FPGA 上に該当回路設計を導入することで、専用チップの開発無しに同等の動作を実現できます。

また、10Gbps イーサネットへの直接アクセスと、時刻源として用いる GNSS 信号受信を行うため、FPGA カードに追加装備できる子ボードのプリント基板(10GbE & GNSS コンボ増設カード)を自社設計して装備しました。

特定機能に特化した専用回路による構成とすることで、数十ワットクラスの消費電力で、約 10 ギガビット/秒の NTP サーバー回路と基準周波数回路を、サーバーに装着される PCI-Express カード1枚にまとめることに成功しました。

開発に際しては、福岡大学NTP サーバーのバックアップ用回線を用い(2019年9月~11月)、実運用環境に近い状況にて、正しい応答を連続して返し続けられるよう試験とバグ修正を繰り返すことで品質の向上が図られています。

 

※記載の内容は発表時点の情報です。その後、予告せず変更となる場合があります。
※記載されている会社名、製品名は、各社の商標、もしくは登録商標です。

さくらインターネット株式会社について 

代表者:代表取締役社長 田中 邦裕
本 社:大阪府大阪市北区大深町4番 20 号 
創 業:1996年12月23日
設 立:1999年8月17日
従業員:528名
資本金:22億5,692万円 
売上高:195億146万円(2019年3月期連結) 
URL  :https://www.sakura.ad.jp/corporate/

この件に関する報道関係者からのお問い合わせ先 

さくらインターネット株式会社 広報担当 
TEL:03-5332-7070 E-mail:press-ml@sakura.ad.jp